多様性の認容と不二性の自覚  ―曼荼羅的世界の視点からー


生井智紹

現代社会は、各々の多様な価値を尊重しつつ調和している秩序ある社会を求めています。現実には、おなじように相互依存(縁起)の上にしか成り立たないおなじいのちを持ちながらも、個々の欲に囚われた雑多な混乱のなかで、様々な個人、民俗、文化がそれぞれ対立している状況にあります。インド以来2500年にわたって、仏教は個々の多様ないのちの在り方を認めあい互いの価値を尊重しながら、同じように相互依存の上にしか生きられないいのちを別々のものとはせずに不二として捉えてきました。互いの個性を尊重しあいながらも不二とする仏教の教えから見れば、仏教徒内部の多様な在り方も調和ある統合態として捉えることができるはずです。

真言密教の教えでは、互いの価値を相互に礼拝し相互に供養しあって各々の仏のいのちを輝かしあって生きる曼荼羅という世界観を説いています。いまからちょうど千二百年前、唐の時代に若い日本からの留学僧が長安の都で、その曼荼羅の教えを相承し、日本に伝えました。その弘法大師空海は、帰国後、あらゆる仏教の諸宗の教えを、インドの神々、儒教、道教の教えをも統合して、一つの曼荼羅として仏教教理を統合し、『秘密曼荼羅十住心論』という著作を著しました。『大日経』の「住心品」に説かれる菩提心転昇の心続生の観念に基づき、あらゆる思想にそれぞれの価値を見出して、それぞれの曼荼羅の諸尊の法門として、曼荼羅的に心の諸相を描いています。

現代、様々な地方に伝わる多様な仏の法門も、おなじように、それぞれの相互理解と相互の価値の尊重の意識の下に見られるとき、一つの秩序ある調和の世界のなかにそれぞれが個性を持ってそれぞれの位置を占めていることが見えてくるのではないかと思われます。多様不二という原理が、それを可能にするであろうことをともに考えてみたいと思います。

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