仏教、世界の平和を維持する重要な力である

中国仏教協会常務理事、
浙江省杭州市仏教協会会長
釈光泉

今年3月27日、中国国家主席である習近平氏がユネスコ(UNESCO)本部における講演の中で、「文明とは交流を通じて多彩となり、互いに取り入れあうことにより豊富にしてゆく。したがって文明の交流と相互参考は、人類文明の進歩と世界平和の発展を推し進める重要なパワーである。」と指摘されたと共に、また「中国人は中華文化に基づき仏教の思想を発展させ、独特なる仏教理論を形成したうえ、仏教を中国から日本、韓国、東南アジアなどまでに広めていた」と特に強調されていた。中韓日三ヶ国は、共に漢伝仏教の文化圏に属している。記載によると、中国前秦時代の苻堅氏が使節や僧侶らを高句麗まで派遣したことは、仏教が韓国伝来の嚆矢だと思われる。唐の時代になると、仏教の各宗派がことごとく朝鮮半島に伝わった同時に、その時の三ヶ国政権も求法僧を中国へ派遣した。その求法僧のうち、大覚義天国師は一番有名であり、北宋元豊八年(1085)に入宋求法し、杭州に渡ったあと、慧因高麗寺に入り、晋水浄源法師について、華厳宗を学んだ。その間、杭州の上天竺法喜講寺、径山万寿禅寺等を歴訪したため、杭州仏教と深く結縁し、中韓両国の文化交流史上において重要かつ突出した位置づけを占めている。また、中日両国は一衣帯水関係にあり、仏教も同じ流れを組んできているから、古来より両国仏教間で緊密な交流を保っている。例えば、唐代の鑑真和上は、前後六回にわたり日本へ渡来し、仏教思想と中国文化を広めたことにより、日本で「天平の甍」と褒められていた。それと当時に、日本からも僧侶を中国に派遣し、仏教と中国文化を学んだ。とりわけ南宋時代に、首府としての杭州は、仏教が盛期を迎え、「東南仏国」という美名と評されるため、数多くの日本から僧侶は来た。例えば、明庵栄西、永平道元、円尓弁円、南浦紹明などは、中国禅宗の海外への流伝のために直接な役割を果たした。清の初期に、杭州の高僧であった東皐心越大師は日本に渡り、書画や篆刻芸術を伝え、琴道を振興し、仏法を広めたにより、中日文化交流史上で画期的な人物となり、日本で「篆刻の祖」や「近代琴の祖」及び曹洞宗寿昌派の開祖と言われている。したがって以上のことから、中韓日三ヶ国仏教は同じ流れと伝統を持ち、文化交流での橋渡しという役割を果たし、「黄金の絆」関係を結ばれ、北東アジア乃至世界の平和を促進するため積極的な役割を果たしていると言えるのであろう。

今の世界、政治、経済、民族と宗教の衝突が依然として継続しつつある。ここ近年来、北東アジアの情勢は数多くの不安定の要素も存在しており、戦争の危険性までにも直面している。仏教は世界的な宗教として、特に北東アジア文化圏における重要な一部として、異なる国・地域・民族間の感情や友誼を結びつける上で、深遠なる意義を持っている。仏陀が慈悲、平等、円融などを主張し、戦争に反対し、平和を提唱するため、仏教は世界平和を維持するための重要な力となると言えよう。それについて、下記のとおり自分なりの考え方をいくつか述べていきたい。

1、慈悲と平等は世界平和を維持するための基礎

仏教は世界的な宗教として世界で数多くの信者がある。現在、北東アジアや東南アジアにおいても、主な宗教として信仰されている。仏教の説かれている慈悲・和合・平等・知恵など理念は、世界平和を維持する礎となっている。

慈悲とは仏教徒としての修養上の基本的な要素であり、仏教の立脚点でもある。大乗仏教は衆生に慈悲を、一切の有情を救済することを趣旨として、無条件に戦争に反対し、平和を唱える。仏陀の定められた五戒から見れば、不殺生は最も核心的なものとして、仏教の慈悲精神を示している同時に、生命を重んずるものでもある。仏教は殺戮を厳しく戒め、同類の相互殺害の反対のみならずに、下等動物への殺害にも反対する。この生きものを守り殺害行為を厳禁する理念は直接に世界平和とつながり、当面の世界において最も重要ではないかと思われる。

仏教の説く平等という理念は、主に「四種カーストの平等」を提唱しているうえに、階級に反対し、民主や平等を主張する。即ち、如何なる国家、如何なる種族、如何なる身分の人々は仏教のネットワークに足を踏み込んだら、ともに平等的に対処される。この人種差別に反対し人類平等を提唱する思想は、各国人民間の結束と相互尊重に役立ち、世界平和を維持すしていくためのキーポイントとなる。したがって、共通の繁栄や恒久平和の世界を築き上げていくには、民主平等・生命の尊重・調和的な共存をしながら、共通点を求め相違点を置き棚にしななればならない。これこそは、世界平和を維持するための基礎である。

2、円融無碍は世界平和を維持するための方法

仏教はインドに生まれたものである。その発展・伝播した地域から見ると、漢伝仏教・チベット仏教・南伝仏教に分かれ、それぞれ異なる文化圏や民族の中において二千余年にわたり発展してきて、異なる民族や異なる国家らの優れた文化を吸収・融合したもと、強い包容力や豊富な中身を持った独特な仏教文化を形成している。中国における華厳宗・天台宗などが主張した円融思想は、まさにこのように生まれたのである。したがって円融無碍は中国仏教の構成要素の一つを数える。慧思大師の著した『大乗止観』の中において、「自性円融」・「円融無二」・「円融無碍法界法門」が述べてある。智者大師作の『観音玄義』及び『法華玄義』などにも「法界円融」、「三諦円融」などを論じている。永明延寿大師も「一心円融」を出している。そのうえ、円融思想が華厳宗においてより重要視されているものとしては、「六相円融」、「円融行布」、「三種円融」などの言い方がある。故に円融思想の提出により、対内的において宗派間の相違や論争を無くすことができ、対外的に異なる宗教と文化間の融合を促進できたことは、平和の理念を豊かに発展させていくものである。

華厳宗の円融思想から見れば、すべての物事は表面的に差別があり、且つそれぞれ独立しているが、本質的に互いに融通し、互いに等しい立場にあることは、正にいわゆる「彼方の中に我が有らば、我の中に彼方も有る」ではなかろうか。二十一世紀の今日は、経済のグローバル化を主として、それぞれの国・民族・地域が政治、文化、科学技術、軍事、安全、イデオロギー、生活様式、価値観、宗教など多次元や多分野において互いに関連・影響・制約し合うという多様化の時代である。仏教の円融思想は、今日までも重要な現実的な意義を持っている。円融の立場から、各国や各民族間において共通点を求めて相違点を置き棚にしておくままに、胸襟を開かれて寛容し合い、双方の共通点を拡大しながら、ある程度の個性を許すはずである。従って、円融理論の実践の強化により、現実の中にある諸々の矛盾・対抗・隔離を取り除き、国家・民族・宗教間の敵視、怨恨や紛争を解消できるだけでなく、世界平和の護持においても重要な意味を持っている。

3、心の浄化は世界平和を守るためのキーポイント

仏陀は知恵、慈悲を提唱し、生命の平等、民族の平等を主張し、戦争や暴力に反対している。当面の世界には、貪欲、無知と恨みにより引き起こされた紛争があれば、民族間の不平等によった衝突および国家間の利益による係争や戦争もある。それらはみな慈悲、平等と包容を欠かし、内心の煩悩や強烈的な占有欲で引き起こしたからである。『維摩詰経』の中に「随うて、其の心が浄ければ則ち国土も浄しに」と説かれてあるように、心の浄化の重要性を強調している。即ち、心を清浄にすれば、世界の平和につながるのである。ゆえに戦争や衝突がともに煩悩から生じたものであるから、仏法を以って心を清らかにし、知恵・慈悲・平等・包容という理念を唱えれば、戦争をなくし世界の平和を守っていくことに役立つ。

ここ近年来、中韓日三ヶ国仏教界が頻繁に交流し、互いに訪問し合い、仏教文化に関わるイベントを大いに行われてきたから、相互理解のみならず、北東アジアないし世界の平和的な発展の促進のためにも積極的な役割を果たした。したがって私たちは仏教の優れたところを生かし、四摂・六度・四無量心など仏教の基本的理念を高揚し、慈悲・平等・円融の思想を実践していきながら、三ヶ国仏教徒が一丸となって、世界平和を守るための重要なパワーとなっていこう。

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