「中国仏教の伝播と啓発」

——仏教におけるアジアの歴史と文化を描く

国際シンポジウムの開催式にて

中国仏教協会副会長 学 誠

2011年6月18日

「過去から現在にかけて、アジアの文化と悠久の歴史は、地球上に存在する私たち人間の、もはや半数以上の人間の共有する事実となった」(マーフィー・ローズの『アジア史』).この記述からアジア地域の歴史の悠久さと文明の複雑さを伺うことができます.しかし、そこから文化の推移――仏教文化   を発見することができます.仏教の広範囲な伝播はアジアの歴史において大いに貢献してきました.仏教がインドからアジア全体に伝わっていくプロセスの中で、中国の仏教は中枢的な役割を果たしてきました.中国の仏教はインド仏教の要諦を受け継ぎ、東アジア各国に伝え、仏教の再興をもたらし、後のアジア諸国に深遠な影響を与えたのです.

漢の明帝が仏法を求める使者をインドに派遣したことは、仏教が正式に中国に伝わる象徴的な出来事であります.地理環境、文化風俗がインドとはまったく異なる中国で仏教が深く根ざすことができたのは、歴史的な因縁があります.漢の時代では、儒教徒が天人感応を信じ、また陰陽五行説、讖緯(しんい)説、巫蠱(ふこ)などの方術も民間に氾濫し、社会に混乱をもたらしました.漢の時代の方術は迷信の色合いが濃く、功利主義の傾向があり、人々の宇宙の秘密を探求する要望と人生の意義を追求する願望には答えられず、道徳倫理の基本まで侵食されていました.そこで、論理的な思考に拠る、因果応報を重視する仏教思想は儒、道学説の欠陥を補い、社会発展の要求に合致したため、統治者の礼遇と支持を得ることができました.取経、訳経、釈経、授経などの活動の展開に従い、外来と本土の高僧の協力の下、仏教はやがて魏晋南北時代に社会広範囲の信仰を得られ、極めて大きな進展を遂げたのです.

隋唐の時代は中国仏教が発展の頂点に達し、当時の中国はすでに仏法の最も敬虔な国となり、最も熱情のある仏教の伝播者でもありました.敬虔たる者の魂の代表者は玄奘大師で、伝播者の魂の代表者は鑑真大和尚であります.この二人は中国仏教の"前を受け継ぐ時代"の終了、"後に啓発する時代"の始まりを告げました.玄奘大師は五万里という長い旅を歩き、インド各地を訪問し、さまざまな師を訪ね、インド仏教の各派の学説を研鑽し、造詣も深く、インド僧俗各界の尊敬を得ました.玄奘大師が帰国後、経典を翻訳することと弘揚することを志し、インドの仏教思想の精華――法相唯識宗を完全に中国に導入しました.これは仏教の中心地が東に移ったという意義を象徴しています.鑑真大和尚は中国の仏教の思想の結晶――唐の時代の律宗と隋の時代の天台宗を総じて日本に伝えました.鑑真大和尚が提唱されている梵網戒と天台教義は日本の仏教の個性の成り立ちに大きな影響を与えました.このふたりの大師の、仏法のためには命も惜しまないという精神は、後世の人々に強靭な意志と魂を残し、アジアの国々の平和共存と世代友好にも歴史的な貢献を果たしました.

宋の時代以降、本土宗派が正式に設立され、修学の体系も日々完備され、漢伝仏教は僧侶と官僚貴族の独占から、一般の庶民の日常生活に浸透し、「家々に阿弥陀、戸戸に観世音」と言われるほど社会全体に伝わりました.ある意味では、観音信仰は中国の仏教の独特な特徴であります.来世の極楽をもとめる阿弥陀仏の教えと違い、観音菩薩は人間を現実的な苦難から救い出し、衆生を導きます.数えきれないほど観音様の救済事跡を総括した『三十三の観音』は、観世音菩薩の大慈大悲精神の完璧な表現であります.菩薩は神秘的な存在ではなく、一般の人々の心のうちに生きています.今、観世音菩薩の中国化された人物像はすでに人々の心に深く根ざしていて、アジアの隅々まで浸透されています.観音信仰は「アジア人の半数の信仰」と謂われ、「人間仏教」を推し進む重要な原動力でもあります.

文化の進捗と時代性は、その文化が広く伝播されるかどうかが鍵を握っています.中国の仏教はなぜ東アジアの国々に広く伝わったのか.それは、単にインドの仏教を受け継いだだけではなく、仏教の伝統を創造的に発展させ、深化させたからであります."前を受け継ぎ、後を啓発する"というふたつの段階をうまく融合させ、"前を受け継ぐ"という段階では、仏教を学習し、吸収し、"後を啓発する"段階では、創造的に発展させ、伝播することです."前を受け継ぐ"ことは"後を啓発する"ことの前提条件で、"後を啓発する"ことは"前を受け継ぐ"ことの必然たる発展であります.

歴史を振り返りますと、中国の仏教は一貫して深遠たる豊かな中国文化の基盤に根ざし、健全な発展を遂げました.中国文化の大乗的な特徴があるからこそ、仏教の慈悲と智慧というふたつの精神は円満に発揚することができました.これは中国文化がアジア及び世界に大いに貢献できることであり、仏教が民族、文化の違いを超え、素晴らしい発展が遂げた成功事例でもあります.中国仏教の発展の歴史的な経緯は、仏教がグローバル化しつつ今日において、必ずや人々に深い啓発をもたらし、重要で指導的な役割を果すことができると確信しております.

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